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忍者のルーツは「中国」にあった!? 服部半蔵の「驚くべき血筋」とは

日本史あやしい話20

 

■服部氏の開祖ともつながる「史上最強の武将」とは?

 

 服部氏の開祖とされるのは平家長(伊賀家長)と見られている。この、「その父が平家貞だった」との伝承が気になるところだ。

 

 よく知られるところの家貞とは、平忠盛と清盛の親子2代に仕えた武将である。少々馴染みの薄い武将ながらも、実のところ、彼の動向は、源平合戦直前の謎めく歴史の解明に大きな鍵を握っていると考えられるから、目が離せない。

 

 その家貞といえば、薩摩の阿多忠景や肥前の日向通良の反乱を鎮圧したことでも知られる人物であるが、注目すべきは、彼を含め、攻略された側の阿多忠景や日向通良までもが、とある武将と大きく関わっている点である。

 

 それが、「史上最強の武将」としてその名が知られる源為朝であった。頼朝の叔父に当たる御仁である。阿多忠景は、その為朝の義父とも言い伝えられる人物で、日向通良は、肥前国(佐賀県)に勢威を張っていた武将。佐賀県上峰町北部にそびえる鎮西山を拠点にしていたと見る識者もいる。

 

 この鎮西山の南麓に、屋形原という地名があるが、龍造寺隆信と大友宗麟の死闘を描いた『肥陽軍記』によれば、かの為朝が拠点(館を築いた)としていたところである。

 

 となれば、鎮西山を通して、伊賀家長、平家貞、阿多忠景、日向通良、源為朝の五者が1本の糸で繋がることになるのだ。史実としてはこれ以上のことはさほどつまびらかではないが、状況を踏まえれば、次なるストーリーが推測できそうだ。

 

 まず、義父を通してすでに薩摩を征していた為朝が、鎮西山を占拠する通良を攻撃。一時的とはいえ為朝が勝利したものの、京の都へと舞い戻らざるを得なくなった(直後に、保元の乱に遭遇)ことで、通良が勢いを盛り返した。それが平清盛の怒りに触れて、配下である家貞の攻撃を受けてしまった。

 

 さらに、薩摩に残された為朝の義父・忠景も一人奮闘して城を守っていたものの、これまた家貞の攻撃を受けて敗走。挙句、喜界島(硫黄島か)に出奔したという訳である。その家貞がどのような経緯で伊賀家長の父となったのか詳らかにはできないが、二人が父子であったという伝承を信じたい。

 

 もちろん以上は筆者の推測でしかないが、まんざらあり得ない話ではないと睨んでいる(詳細は藤井勝彦著『源為朝伝説』天夢人を参照)。

 

■忍者の祖は「始皇帝が派遣した男」!?

 

 また、時代をもっと遡れば、服部氏が、渡来系氏族・秦氏の流れを汲むとの説まで飛び出してくるから興味深い。

 

 秦氏とは東漢氏と並ぶ渡来系氏族で、3〜7世紀頃に渡来。『日本書紀』応神天皇紀によれば、百済より百二十県の人を率いてやってきた弓月君を祖とすると記しているが、天日槍を祖とする新羅・加羅系渡来氏族とみなす識者も少なくない。

 

 ともあれ、その主要産業は、養蚕や織絹に関することで、仕上げられた織物が、肌(ハダ)のように柔らかだったというところから波多(秦)の姓を賜ったという。京都(太秦や深草)を拠点としていたが、当時京都の人口の3分の1が秦氏だったと言われるほどの大勢力であった。

 

 この秦氏と前述の服部氏が、具体的にどのようなつながりがあるのか、これまたわかりにくいが、服部氏が機織部に由来する姓氏で、秦氏と何らかのつながりがあったことだけは間違いなさそうである。

 

 また、怪しげな説ではあるが、後の服部氏の十八番ともいうべき忍びに関して、秦の始皇帝が派遣してきた徐福が忍者の祖であったと、まことしやかに語られることもある。徐福らが熊野に上陸して北上。たどり着いた先が、伊賀だったとか。

 

 そこでは、伊賀衆が、徐福が連れてきた御色太夫から謀術、つまり忍びの術を学んだと。もちろん疑惑の強い説ではあるものの、一概に全否定することだけはすべきではないだろう。万に一つの可能性がある以上、再検討すべきではないだろうか?

過去記事

藤井勝彦ふじい かつひこ

1955年大阪生まれ。歴史紀行作家・写真家。『日本神話の迷宮』『日本神話の謎を歩く』(天夢人)、『邪馬台国』『三国志合戰事典』『図解三国志』『図解ダーティヒロイン』(新紀元社)、『神々が宿る絶景100』(宝島社)、『写真で見る三国志』『世界遺産 富士山を行く!』『世界の国ぐに ビジュアル事典』(メイツ出版)、『中国の世界遺産』(JTBパブリッシング)など、日本および中国の古代史関連等の書籍を多数出版している。

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